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福井地方裁判所 平成6年(わ)93号 判決

被告人

1 法人の名称

株式会社曙学院

本店所在地

福井市南四ツ居一丁目一番一号

代表者の氏名

市岡高榮

代表者の住居

福井市北四ツ居町七〇八番地

2 氏名

市岡高榮

年齢

昭和二三年八月二三日生

本籍

福井県吉田郡上志比村市右衛門島第六号二三番地

住居

福井市北四ツ居町七〇八番地

職業

会社役員

検察官

長谷川鉱治

弁護人(私選)

玄津辰弥

主文

被告人株式会社曙学院を罰金二〇〇〇万円に、被告人市岡高榮を懲役一年に処する。

被告人市岡高榮に対し、この裁判確定の日かち三年間刑の執行を猶予する。

理由

(犯罪事実)

被告人株式会社曙学院(以下「被告会社」という)は、福井市南四ツ居一丁目一番一号に本店を置き、図書、教育資材の製造、販売等を目的とする資本金二〇〇〇万円の株式会社であり、被告人市岡高榮(以下「被告人市岡」という)は同会社の代表取締役として業務全般を統括していたものであるが、被告人市岡は被告会社の業務に関し法人税を免れようと考え、売上除外や架空仕入れを計上するなどの方法により所得を隠した上

第一  平成元年六月二一日から平成二年六月二〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が六四六八万七七六四円(別紙1の当該事業年度分の修正損益計算書参照)であったのに、平成二年八月二〇日福井市春山一丁目六番一号の福井税務署において、同税務署長に対し、欠損金額が四七万八六〇二円で、納付すべき法人税額がない旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額二四三八万六〇〇〇円(別紙2の当該事業年度分のほ脱税額計算書参照)を免れた

第二  平成二年六月二一日から平成三年六月二〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が七一四一万五一七三円(別紙1の当該事業年度分の修正損益計算書参照)であったのに、平成三年八月二〇日前記福井税務署において、同税務署長に対し、所得金額が零円で、納付すべき法人税額がない旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額二五二〇万六七〇〇円(別紙2の当該事業年度分のほ脱税額計算書参照)を免れた

第三  平成三年六月二一日から平成四年六月二〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二八五七万六一六八円(別紙1の当該事業年度分の修正損益計算書参照)であったのに、平成四年八月二〇日前記福井税務署において、同税務署長に対し、欠損金額が四五七万四〇七八円で、納付すべき法人税額がない旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額九五九万六〇〇円(別紙2の当該事業年度分のほ脱税額計算書参照)を免れた

第四  平成四年六月二一日から平成五年六月二〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二二七二万一八四九円(別紙1の当該事業年度分の修正損益計算書参照)であったのに、平成五年八月二〇日前記福井税務署において、同税務署長に対し、欠損金額が二二四万六五五六円で、納付すべき法人税額がない旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額七四三万三四〇〇円(別紙2の当該事業年度分のほ脱税額計算書参照)を免れた。

(証拠)

全部の事実について

一  被告人の

1  公判供述

2  検察官調書(検察官請求証拠番号乙二から六)

一  証明書(四通)

一  査察官調査書(前記番号甲六から二二)

(法令の適用)

1  被告会社

罰条 各事業年度につき法人税法一六四条一項、一五九条一項、情状により同法一五九条二項

併合罪加重 刑法四五条前段、四八条二項

2  被告人市岡

罰条 各事業年度につき法人税法一五九条一項

刑種の選択 懲役刑

併合罪加重 刑法四五条前段、四七条、一〇条(犯情の最も重い第二の罪の刑に加重)

執行猶予 刑法二五条一項

(量刑の理由)

本件は被告人両名の法人税法違反事件であるが、ほ脱した法人税額の合計は、六六〇〇万円を超え、しかも、ほ脱率は一〇〇パーセントである。犯行の方法は教材の売上げ除外や架空仕入れの計上等であるが、方法は多岐にわたっており、四事業年度にわたって全く法人税を納付しないなど悪質である。動機は将来の業績悪化や老後に備えたというのであるが、特に有利に考慮すべき事情とはいえない。この種事犯は、国家財政に損害を与えると共に真面目な納税意欲を損なう危険性が高く、被告会社が教育に関わる事業を行っていることなども合わせて考えると、被告人ら、特に、犯行をほとんど一人で行った被告人市岡の刑事責任は重い。

しかし、ほ脱により得た資金もそのまま預金するなどしており、発覚後事実を素直に認め、本税、重加算税等を納付し、顧問税理士の指導も受けて、正規の経理担当者を採用するなど、再犯防止の措置をとっている。事件が大きく報道されて社会的信用を失い、業績も悪化するなど経済的打撃も受けている。また、被告人市岡も、納税意識に問題のあったことを反省し、今後二度とこのような事件を繰り返さないことを誓っている。これまで交通関係以外の前科はなく贖罪寄付もしている。その他被告人両名のために酌むべき事情も考慮し、被告人両名を主文の刑とし、被告人市岡については今回に限り刑の執行を猶予した。

(求刑 被告会社-罰金二〇〇〇万円、被告人市岡-懲役一年)

(裁判官 安江勤)

別紙1 修正損益計算書

〈省略〉

別紙1 修正損益計算書

〈省略〉

別紙1 修正損益計算書

〈省略〉

別紙1 修正損益計算書

〈省略〉

別紙2 ほ脱税額計算書

〈省略〉

別紙2 ほ脱税額計算書

〈省略〉

別紙2 ほ脱税額計算書

〈省略〉

別紙2 ほ脱税額計算書

〈省略〉

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